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通信機器技術部から研究所へ異動して2年目に、新福は大きなプロジェクトの一員になった。それはミリ波帯の研究開発。携帯電話などで使用される周波数帯の空きが逼迫するなか、より高い周波数帯のミリ波帯は空きがある。その無線伝送技術の開発が大きなテーマである。ミリ波帯は帯域が広いため高速で大容量の伝送が可能だ。また携帯電話の基地局とネットワークをつなげるのは光ファイバーであったが、無線化するとどこにでも設置できるといったメリットが生じる。その一方で直進性の高さや、降雨の影響などに対する対策が必要になる。
「安定した通信を実現するために、無線の信号をネットワーク側で検出して経路を切り換えるという連携が必要です。そのためにネットワーク側に装置を入れることで、無線と融合させ大容量、高速度の通信を実現しようとするものです。」
このプロジェクトは外部の協力も仰いでいる大がかりなものだ。新福はネットワーク側のデジタル回路設計を担当するチームの一員として「仕事を通して新しいことを学びながらそれを実践できる」という充実した日々を過ごしている。
プロジェクトに参加して感じたのは「ハードルが高い」ということだった。大学で音響系の研究をしてきた新福は入社5年目だがデジタル回路についての知識がまだ浅い。だから一つの回路を仕上げるうえで試行錯誤が多く、時間がかかってしまう。また全体の概念を掴みきれないため、着手するのにも時間を要してしまうのだ。
「性格上、すべてをきっちりやろうとするので時間がかかります。きっちりやり過ぎると出戻りがあったときロスが大きくなるので、力を抜くときは抜いてやるように、先輩にも言われるんですけどね。」
しかし「きっちりやる」という性格は逆に言うと、いろいろなことを気にかけて設計するということなので細部の詰めもきっちりし、漏れがないという正確さにもつながる。「そのバランスが課題」と新福は笑う。ハードルは高いが、努力すれば超えられる手応えも感じている。
「仕事の区切りでシミュレーションをして、不具合に応じてプログラムを書き換えて、それで思い通りに動いたときは小さな達成感を覚えます。また非常に大きなプロジェクトに参加し、社会に貢献する開発に携わっている点でも一つひとつの仕事にやりがいを感じます。」
新福が日本無線に入社したのは、社内の雰囲気が良かったことに惹かれ、技術者として広いフィールドで活躍できそうだと感じたからだ。
「入社後、常々感じるのは、風通しの良い社風のなか仕事がしやすいということ。これは当初の印象通りでした。また、やりたいことがあれば、手を挙げて申し出ればやらせてもらえるということ。そういう懐の深さ、若い人にどんどん新しいことをさせよう、チャレンジさせようという風土がありますね。」
そういう環境にあって新福の今の目標は、できるだけ広くゼネラリストとしての能力を身につけ、さらにある一つの分野については誰にも負けないスペシャリストになること。
「信号処理の知識が足りないと感じれば、講座に参加したり先輩に聞いたりして知識と技術を強化します。今回のようにネットワークが関連する開発に参加する機会があれば周辺技術について習得します。今はそうやって目の前の仕事と格闘しながら、技術者として成長していきたいです。今、担当している分野を究めていくだけでも大変だと思いますが、将来は違う分野でチャレンジもできる、それが日本無線の良さだと思います。」
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