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技術の進歩により次々と製品が変化していく中で、市場における製品寿命が長く、長期間変わらずに愛用されているものもある。船舶に搭載する通信機器がそのひとつだ。少なくとも10年程度は使われ続けることが珍しくない。
その中で、井上は衛星通信端末の開発・設計業務を担当している。
船舶が外洋に出ると、陸上のように基地局はなく、衛星を介しての通信が必須となる。
井上の扱うインマルサットC衛星通信端末は、外洋に出る船には搭載が義務付けられる製品であり、遭難救助信号の発信や海上安全情報の受信など、船舶の運航において安全・安心に寄与する製品だ。そのため、装置の耐久性や信頼性、ユーザビリティが特に重要となる。
「お客様に長くお使いいただく製品ですので、製造中止となる部品も出てきます。その際は、同等以上の性能を維持しつつ、部品変更や回路変更を行う必要があります。これがなかなか大変で、部品1つ1つの特性を把握することはもちろん、回路の知識を持っていないとどうにもなりません。日々勉強です」と井上。続けて「海上においても陸上と同じようにブロードバンド通信のニーズが高まっています。今の仕事の経験や知識を、未来の新製品開発に活かしていきたい」と語る。
井上が学生時代に専攻していたのは無線通信。大学院では、信号処理によって、目的の相手だけに情報を伝え、その他には解読できない秘密通信というテーマを選んだ。
「学生時代はPCでのシミュレーションが大半で、回路を組んだり、無線機を操作することはほとんどありませんでした。そこで、無線通信の知識が活かせて、ものづくりができる会社に入りたいと思い日本無線を志望しました」という。現在の業務では、開発設計の中でもハードウェアを扱っている。
「当初はとまどいもありましたが、上司や先輩といった周囲のメンバーに気兼ねなく質問できる環境なので、本当に助けられています。また、社内研修で実践的な内容を学べるのもありがたいですね。外部講師ではなく、社内のベテラン技術者が講師を担当しているので、仕事関連の質問をしても的確な回答やアドバイスをもらえます」と続ける。
「部品や回路の変更検討・評価、お客様のご要望に応じたカスタマイズや、コスト抑制のための製造工数削減などの業務にも携わっていますが、それらを通じて製品をよりよく知ることができるようになりました」と井上。何よりも実践を通じて学んできたことが大きい。
また、配属されて間もなく、造船の現場で機器が装備されるシーンや、練習船に同乗して製品が使われているシーンを見学し、装備に携わる人々や、お客様の思いや声に触れることができたのが、印象的だったそうだ。技術者としての視点だけでなく、様々な角度からモノづくりをとらえることが大切だと心がけるきっかけともなった。
今後は、後輩から目標とされるエンジニアになりたいと井上はいう。
「当社はエキスパートやスペシャリストが多数揃っている会社です。一人ひとりの先輩方がそれぞれの専門分野で一目置かれるほどの存在。自分もそうなりたいですね。今までは先輩方を頼ってきましたが、これからは自分が後輩たちから頼りにされなくては、と思っています」
自分の得意分野を持ち、井上に聞けば間違いないといわれるまでに精通したいのだ。
「技術的な業務のほか、全社プロジェクトの一員となり組織風土をより良くしていくための活動に参加しています。若いうちからこのような経験を積めるのも魅力の一つですね。この活動を通じて、技術者としてだけでなく、人としても成長していきたい。」と井上はこれからも熱い思いを持ち続ける。
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