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矢野は大学時代を西日本の海の幸に恵まれた土地で過ごした。「就活は全国幅広く調査をしていました。日本無線を知ったのは母校の大学内での説明会のときです。自然と共存するライフスタイルが性に合っているので、最初は長野の勤務に魅力に感じました」日本屈指のゲレンデまで1時間程度の好立地により、今はスキーにはまっているらしい。
「機械系専攻の学生の大半は、就職後機構設計業務に携わるわけで、自分は製品開発全てのプロセスに携わることができ、且つ様々なフィールドで活躍できるような企業に興味がありました。そんな中、日本無線は、あらゆる災害を想定したハイスペックな機器やシステムを陸海空すべての分野で作っていることを知り、最終的には是非そういうモノづくりに挑戦したいと思い、当社を志望しました」
日本無線では入社後1年間は開発から組立、品質保証などさまざまな部署で実習を行う。翌年4月に仮配属先が決まる。矢野は『大型シミュレータ装置の開発チーム』の配属となった。
矢野が最初に手がけたのは『ドライビングシミュレータ』である。労力や危険が伴うテスト走行による検証実験を、疑似空間で実現するシステムである。2年目の10月に正式配属となってからは、船から岸壁に移るためのブリッジを安定させる制御装置『洋上施設アクセスブリッジ』の開発に参加し、3年目の春からは、3つ目のプロジェクトとして『気象レーダ』の開発に携わっている。
「私が担当している製品は大型のものが多く、気象レーダのパラボラアンテナで言えば直径2mから5mぐらいまで、重さにして数百kgになります。このため可動部に加わる負荷は相当なもので、耐久性も求められます。防錆・防塵性だけでなく屋外の使用のため虫対策も必要になります。組立用の治具も大きく、作業者数名で組み立てることもあります」
設計開発においては、新しい材料や構造を用いることも少なくなく、解析ソフトだけでは不十分だと言う。わずかな疑念やリスクがあれば躊躇せずサンプルを用意し評価試験を行うという矢野の姿勢には、すでにプロたるこだわりが垣間見られる。
目下の課題は?という問いに矢野はこう答える。「一つには、モノづくりの全ての過程を熟知すること。設計には必ず意図があり根拠があります。なぜこうしているのか、先輩方が製図された図面からこれを読み取ること、同時に構造をしっかり理解すること。そうする中で複雑な駆動部に組み付く部品にはどのような要求をしなければならないかが見えてきます。二つ目には、コスト削減につながる図面を丁寧に描くことです。大型製品は多数の部品の集合体ですので、一点単位で性能とコストのバランスを追求する姿勢が重要だと感じています」
高性能で、かつ高信頼性、高耐久性を誇る日本無線の製品群。その裏側には技術にこだわる数多くのエンジニアの存在がある。矢野は日本無線らしさとして「明るく、開放的な環境」を挙げる。外光をふんだんに取り込んだ作業環境のことだけではない。エンジニアが技術的な難題に対して皆で知恵を出し合うオープンな風土のことだと言う。
「今は助けられてばかりですが、いつか答えを提供できる人になりたいと思います。」誰に対してと尋ねると「新入社員、若手社員。お客様。世界中の人々ですかね。そして新しいものを創造し、開発できるような技術者が目標です」
北アルプスの山々には、今日も矢野ら技術者の清々しいスピリットがこだましている。
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